住商総研 ワールド・フォーカス2008年11/12月号(No.33)

景観

百年に一度の金融危機下の世界経済

2008年11月14日

■著者プロフィール

大河原昭夫

大河原昭夫

住友商事総合研究所 
取締役所長
1973年住友商事入社。
海外運輸部、海外プロジェクト室、自動車部門、ロサンゼルス駐在(マツダ・モータース・オブ・アメリカ出向)、ワシントン事務所、情報調査部長などを経て、2006年4月より現職。

枯葉散る晩秋。2008年も早くも回顧と展望の季節を迎えた。今年ほど、前半と後半で経済環境が様変わりした年は記憶にない。この巻頭言でも年前半はガソリン価格高騰、食糧危機、ユーロ高などインフレ関連の話題を取り上げた。しかし、8月の北京五輪後辺りから米国発の金融危機の世界的な拡がりを受けて様相が激変した。7月に1バレル147ドル(WTI)の史上最高値を記録した原油が足許では60ドルを割り込んでいることに象徴されるようにあらゆる資源価格がわずか数ヶ月のうちに急落し、一転してデフレモードを呈している。市場の荒っぽい値動きに振り回される毎日であり、変化への対応力が益々問われる局面である。

100年に一度と称される金融危機の影響は実体経済にも及んでいる。IMFは11月6日に発表した世界経済見通しにおいて10月時点での見直しから更に下方修正し、世界経済の成長率を2008年は3.7%(-0.2%),2009年については2.2%(-0.8%)とし、日米欧については戦後初めて揃ってマイナス成長という予測を出した。世界経済は世界同時不況突入の瀬戸際にある。

金融危機がなかなか収まりを見せないなか、世界経済があたかも大恐慌に突入するような論調も見られ、米国ではバラク・オバマ次期大統領の新ニューディール政策が注目されている。確かに株価急落、銀行連鎖破綻、基軸通貨の動揺等現状には大恐慌時との類似性も見られる。しかし、今回の危機に直面して、各国政府と中央銀行は過去の教訓を活かし、未曾有のスピードと規模で財政政策と金融政策のあらゆる手段を総動員している。本日からワシントンで開催される金融サミットも危機を乗り切る上で不可欠な国際協調の重要な一歩である。また、かつての大恐慌時には米国でのスムート・ホーレー関税法の成立によるブロック経済化の進展が世界貿易の縮小をもたらし大恐慌の悪化要因になったと言われるが、今日そのような愚が繰り返される可能性は低いであろう。更には活力のある新興国の伸長という大恐慌時にはなかった新たな要因もある。

以上を総合すると大恐慌の再来は回避されると見ておいて良いのではなかろうか。今回の一連の政策対応は危機の規模が未曾有のことであるだけに、効果の程は予測困難であるが、実体経済の足かせとなっている信用収縮にも早晩終止符が打たれることになろう。その結果、米国経済は来年第1四半期まではマイナス成長、その後は弱いながらもプラス成長が維持されるというのが基本シナリオである。

確かに今起きている金融危機は大恐慌以来最悪で100年に一度の事態と言えるであろうが、実体経済においては、大恐慌になるような状況ではないとはっきり区別して考えることが肝要であろう。1929年10月に発生した大恐慌では1932年までに米国のGDPが累計で3割近く落ち込み、失業率も25%という状況であった。現在も勿論深刻な事態であることは間違いないが当時の経済状況と比較するという相対感をもつことが大事である。

昨今の日々のニュースを見ていると、なかなか明るさを見出し難い状況ではあるが、世の中、朝の来ない夜はなく、夜明け前が一番暗いという。来年第2四半期辺りには明け方を迎えられることを期待したい。

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