再生可能エネルギー(Renewable energy)

洋上風力発電という巨大プロジェクトへの挑戦

村形(左)は1999年入社。アジア、CIS、中東市場担当、米国での駐在を経て、ベルギーのプロジェクトを担当することになった。「住友商事は若い人の意見をよく聞いてくれる風通しのいい会社」と話す。同じく、プロジェクトのメンバーである小坂礼那は2002年に事務職で入社、職掌転換制度を使って基幹職となり、1年半の米国研修も経験した。「キャリアビジョンを実現できる仕組みが整っているのが住友商事の魅力です」

総合商社には、新たな領域を切りひらく開拓者としての役割がある。住友商事においてその役割を果たしている事業分野の一つが、再生可能エネルギー事業だ。社会への貢献をビジネスとして成立させていくこと──。そこに、この事業の挑戦がある。現在進行中の3つのプロジェクトを紹介する。

洋上風力発電という巨大プロジェクトへの挑戦

ベルギー沖合およそ46キロメートルの北海海域。ここに、水面に立つ白鷺(しらさぎ)のような姿の風力タービンがずらりと並んでいる。その数55基。ベルギーのパークウィンド社が設置した洋上風力発電施設である。同様の風力タービン群72基がその手前およそ10キロメートルの地点でも稼働している。それぞれ、「ベルウインド」「ノースウインド」と呼ばれるプロジェクトによって運営されている洋上風力発電施設だ。

さらに現在、3つ目の洋上風力発電プロジェクト「ノーベルウインド」が、2017年の商用運転開始を目指して進められている。

これらのプロジェクトに住友商事が参画したのは、2014年9月のことである。住友商事グループはこれまで、米国、中国、南アフリカで陸上風力発電のプロジェクトを手掛けてきた。日本国内でも、茨城の鹿島、山形の酒田で風力発電を行ってきたほか、秋田の男鹿でも新しい発電施設が目下建設中である。(2015年1月現在)しかし、海上での風力発電に取り組むのは、このベルギーのプロジェクトが初めてとなる。

「洋上風力発電は陸上よりも大型の設備を建設しやすく、山や建物などが周囲にないので、風の力を存分に活用できるというメリットがあります。一方、建設そのものは陸上よりも難易度が高く、投資額も大きくなります」

そう説明するのは、このプロジェクトを担当する環境エネルギー事業第二部の村形直樹である。これまでの陸上風力発電事業の経験を生かせるだけでなく、資金調達、資機材調達、プロジェクトマネージメントなどに総合商社としての力を発揮することができる。それが、このプロジェクトに住友商事が参画した理由だ。

洋上風力発電という巨大プロジェクトへの挑戦

風力タービン建設の模様。海洋工事用の船舶を脚で海底に固定して作業を行う。陸上風力発電に比べて建設工事やメンテナンスの難易度が高いのが洋上風力発電の特徴だ。それだけプロジェクト運営の力や資金力が求められることとなる

世界の風力発電市場は、2020年までに現在の2倍、洋上発電は3倍の成長が見込まれている。しかし日本では、地理的条件によって洋上発電施設の設置が難しいという事情がある。

「ベルギーで数十基規模の風力発電施設を洋上に建設できるのは、“遠浅”という好条件があるためです。水深が最大でも30メートル程度の遠浅が沖合40キロメートルくらいまで続いているので、海底に基礎をつくってタービンを立てることが比較的容易なのです」

そのような遠浅の海岸をほとんど持たない日本では、現在、海上に設備を浮かべる浮体式発電施設の実証実験が続けられている。海外での洋上風力発電事業のノウハウを、将来的に日本国内でのエネルギー事業に生かしていくこと。そんなビジョンを持って、村形たちはベルギーのプロジェクトに情熱を注いでいる。

国内最大規模となるバイオマス発電所

1992年に入社した大澤知弘。タイの電力事業子会社で社長を務めた経験もあり、今回の新会社社長に抜てきされた。「新しい取り組みを始める際には、いろいろな部署の担当者が意見を言い合って、複眼的な視点で構想を練ります。それができるのが住友商事の強みだと思います」と話す。「みんなで力を合わせて仕事をするという文化が根づいているのを感じますね」

国内最大規模となるバイオマス発電所

木材、もみ殻、わらなど、生物由来の燃料を用いて発電を行うバイオマス発電が再生可能エネルギーの一つに数えられるのは、「カーボンニュートラル」という考え方による。バイオマス発電も燃焼によってCO2を排出するが、そのCO2は植物に吸収され光合成によって酸素となる。さらに、その植物が将来的にバイオマス発電の燃料となる。つまり、長期的なサイクルで見ると、大気中の炭素(カーボン)の量に変化を与えず(ニュートラル)に発電ができるということだ。

一方、バイオマス発電には、太陽光や風力などの再生可能エネルギーと異なる点もある。安定的なベース電源となり得る、というのがそれだ。

「気象条件に発電量が左右される自然エネルギーと違って、バイオマス発電施設は24時間安定的に稼働させることができます。バイオマス発電を太陽光や風力発電と組み合わせることができれば、電力供給が不安定であるという再生可能エネルギーの弱点を補強することもできると考えています」

現在、愛知県半田市でバイオマス発電施設の建設プロジェクトを進めているサミット半田パワーの代表取締役・大澤知弘はそう話す。サミット半田パワーは、電力小売りを手掛ける住友商事の子会社、サミットエナジーが2012年に設立した新しい会社である。

2017年春に商用運転がスタートする予定の半田バイオマス発電所では、米国、豪州をはじめとする海外諸国から輸入した木質チップ、椰子殻などを燃料として使用することになる。この輸入燃料の調達スキームに、総合商社ならではのノウハウが生かされていると大澤は言う。

国内最大規模となるバイオマス発電所

間伐材などから加工される木質チップが半田バイオマス発電所の主燃料となる。チップを運搬する船が発電所の近くに着岸し、燃料を発電所に運び入れる仕組みになる

「発電した電気は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度によって、一定の価格で売電することが可能です。しかし、燃料費が変動すると収益が大きく変わってしまいます。そこで、木材資源を調達する社内の他部署と連携して、長期にわたって固定価格で木材を仕入れることができる仕組みをつくりました」

一方、燃料の一部には、国産の木質チップも使用する予定だ。ここでは、国内の環境保全の取り組みとの連携を視野に入れている。

「森林を健全な状態に保つためには、木を間引きする作業が必要です。その作業で発生する間伐材を燃料にすることで、資源の有効活用、および地域貢献が実現すると考えています」

現在建設中の半田バイオマス発電所は、完成すれば国内最大規模のバイオマス発電施設となる。このプロジェクトにこれまでの商社マンとしての経験のすべてを注ぎ込みたい。そう大澤は話している。

蓄電池を核とした事業で安定的なインフラをつくる

プロジェクトリーダーの藤田(左)は大学院でバイオを研究したのち、1992年に住友商事に入社。一貫して新技術や新規事業の立ち上げに関わってきた。「社会が直面する課題をビジネスの力で解決していくことが、入社以来変わらない目標です」。メンバーの山元隆三は、米国の大学卒業後の2009年に入社。「自分自身の仕事によって、国際社会における日本のプレゼンスを向上させることが夢」と話す

蓄電池を核とした事業で安定的なインフラをつくる

再生可能エネルギーによる発電の安定性を高めるソリューションとして期待されているのが、蓄電池の活用である。太陽光発電であれば日が出ている昼間、風力発電であれば風況が良好なときにつくった電気を蓄電池に蓄えることによって、電力活用を安定させることができる。

現在、地方自治体と連携して、その蓄電池活用のモデルづくりに取り組んでいるのが、住友商事の電池事業開発部だ。部長代理の藤田康弘は説明する。

「鹿児島県薩摩川内市の離島である甑(こしき)島に太陽光発電設備と蓄電池システムを設置し、新しいエネルギー活用のモデルを構築するプロジェクトを進めています。このプロジェクトのポイントは、コストの安いリユース蓄電池を使用することによって、経済合理性を追求するところにあります」

蓄電池を核とした事業で安定的なインフラをつくる

日産自動車との合弁会社であるフォーアールエナジーを通じて、日産リーフに搭載されていた蓄電池を再利用。蓄電システムを低コストで構築する。リユース蓄電池を再生可能エネルギー事業に活用するモデルをつくっているのは住友商事だけだ

蓄電池の値段は現状ではまだまだ高く、それが蓄電システム構築のハードルとなっている。しかし、電気自動車(EV)で使用していた蓄電池を再利用すれば、比較的低コストで蓄電池システムをつくることができると藤田は話す。2013年に大阪の夢洲(ゆめしま)で行われた実証実験で、技術面の検証は済んでいる。今回の甑島のプロジェクトの目標は、それがビジネスとして成立するモデルをつくることだ。

離島の電気は、ほとんどがディーゼル発電によってまかなわれている。CO2排出量が多いその発電方式を再生可能エネルギーによる発電に部分的に置き換えることによって、CO2の総量を減らすことができる。さらに、このモデルが実現すれば、台風などによってしばしば停電に見舞われる島の電力インフラを安定させることも可能になる。

「蓄電池を核とした新しい事業モデルは、国内外の小規模な離島で役立つだけでなく、将来的には、再生可能エネルギーの導入量拡大を目指す内陸の生活エリアでも活用可能であると考えています」

薩摩川内市は現在、この先駆的な電力インフラをベースに、甑島を環境負荷の低い「エコアイランド」として観光地化していく計画を立てているという。

道なき道を進み新しい領域に到達する

再生可能エネルギーの活用を進めていくことは、人類が地球上で生活を続けていくために欠かせない取り組みだ。その取り組みを継続していくには、安定的に収益を生み出す仕組みをつくることが必須である。社会や環境に貢献すると同時に、それを長期的に継続可能なビジネスとしていくこと。そこに住友商事の再生可能エネルギー事業のチャレンジがある。

しかし、そのチャレンジの射程は、個々の事業の範囲にとどまるものではない。村形が語るように、ベルギーのプロジェクトの経験は、周囲を海に囲まれた日本の洋上風力発電整備にいつの日か生かされることになるはずだ。バイオマス発電は、国内の林業を活性化させるという点で、エネルギー領域にとどまらない社会貢献事業となる可能性を持つ。甑島の蓄電池事業が成功すれば、EVと電力インフラをつなぐ新しい形を世の中に提示することになるだろう。

「新規事業開発やイノベーションを起こす取り組みは、道なき道を進んでいくようなものです。しかし、その道の先にしか、新しい世界はありません。そこに到達するまで、決してあきらめずにやり遂げることが大切であると考えています」

そう藤田は言う。未知の領域を切りひらき、社会に貢献する新しいビジネスを生み出していくこと。総合商社だからこそ可能なその挑戦を、一人一人の社員の奮闘が支えている。

(敬称略)

  • 「自社の利益だけではなく、社会の利益を広く考えること。そのような視点が、会社を持続的に成長させていくのだと思います」変わりゆく時代に、変わらない信念を。
  • 「どんな困難にぶつかっても、粘り強い取り組みを続けていけば、思いは必ず実現する。私はそう信じています」変わりゆく時代に、変わらない信念を。
  • 「自分たちが正しい道を歩んでいるという確信と高い志、そしてお客さまからの信用が私たちのチャレンジの支えとなっています」変わりゆく時代に、変わらない信念を。
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