建設不動産事業(Construction and real estate business)

自らの手で開発し自らの手で提供する

建設不動産本部長の安藤伸樹。1982年の入社以来、一貫して建設不動産の分野で働いてきた。総合商社の「総合力」は、それぞれの事業部門が他の事業分野をよく理解することによって生まれる、と話す。「建設不動産事業がビジネスのハブとなって、建設資材納入や入居世帯へのケーブルテレビ敷設といった、別領域の事業がともに伸びていく。それが仕事の喜びの一つです」

住友商事の歴史は、不動産事業から始まった。エリア開発から施設の運用までを自ら手掛ける「ハンズオンの文化」と「現場主義」が、現在の住友商事の文化の基礎をつくったと言っても過言ではない。住友商事のDNAを背負って挑戦を続ける建設不動産事業の取り組みを紹介する。

自らの手で開発し自らの手で提供する

住友商事の前身である大阪北港株式会社が設立されたのは、今から100年近く前の1919年のことである。現在「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」が立地する大阪の港湾エリアの開発を手掛ける不動産会社であった大阪北港は、その後、住友土地工務、日本建設産業と社名を変更し、1952年に住友商事となって現在に至っている。エリア開発や施設の運用を自ら手掛ける事業者であったことが、現在の住友商事の独自性につながっていると、建設不動産本部長の安藤伸樹は話す。

「ハンズオン、つまり、自らの手で商材を開発し、自らの手でマーケットに直接商品を提供していく。そのスタイルこそが、住友商事の原点であると私は考えています」

海外から物資や商品を輸入し、日本のマーケットに届ける。あるいは、日本でつくられた商品を海外の国々に輸出する──。それが商社の元来の機能であったことを考えれば、住友商事のスタートは確かに個性的なものだった。出資や投資を行うだけでなく、自らが事業の主体となって、人材を派遣し、商品やサービスを生み出していく。その「ハンズオンの文化」のDNAが色濃く表れているのが、現在もコア事業の一つであり続けている建設不動産事業だ。

これまで、住友商事の建設不動産事業はオフィスビル、住宅、商業施設の3つの柱で成り立ってきた。管理するオフィスビルは首都圏を中心に55物件(2014年3月末時点)、現在「クラッシイハウス」のブランドで展開している分譲マンションは、累計供給戸数で6万戸以上を数える。大型ショッピングモールの「テラスモール湘南」や「晴海トリトンスクエア」などの商業施設もよく知られている。それらの多くは、住友商事グループが企画・開発から運営までを直接手掛けている物件である。

最近になって、そこに4本目の柱である金融ビジネスが加わった。自社で開発・運営を手掛ける物流施設を対象としたファンドや、私募リート(非上場のオープンエンド型不動産ファンド)がそれだ。これが一般的な金融ビジネスと異なるのは、自分たちが熟知した物件を対象にし、その不動産価値を最大化したうえで金融商品に組み込んでいる点だ。ここにも「ハンズオンの文化」が生きているというわけである。

住民とともに時間をかけて街を再生させていく

東京・神保町のテラススクエアの完成イメージ。博報堂旧本社ビルなど6棟のビルが、オフィス、商業施設、屋外のオープンスペースなどを含む1棟の複合施設に生まれ変わる。2015年3月完成予定

住民とともに時間をかけて街を再生させていく

生活者や社会との直接的な接点を持つ事業を自らが主体となって進める。そこに住友商事の建設不動産事業の特徴がある。その特徴が生かされている最近の取り組みが、東京・神田エリアの再開発事業である。

「神田地区は2001年まで住友商事の本社があった場所であり、現在でも10棟のオフィスビルをグループで所有し、管理運営している思い入れのあるエリアです。この街の魅力を、時間をかけてより高めていくことがこの事業の目的です」

古本屋で本を物色し、ミニシアターや演芸場でエンターテインメントを楽しみ、古い喫茶店や洋食屋でくつろぐ。そんな楽しみ方ができるのが神田という街の特徴である。また、この地域に住む人たちの日常の生活があることも、ほかのオフィス街との大きな違いとなっている。エリアが持つそのような特性を生かしていきたいと安藤は話す。

「神田が持つ文化的なレガシーを、この街に住んでいる方々とともに守り、発展させていくことを私たちは目指しています。住民との対話を重ねながら、時間をかけて街をつくっていく。そのような視点がなければ、本当に魅力的なエリア開発はできないと考えています」

町内会の夏祭りに参加し、住民と交流し、住友商事のスタンスを一つ一つ理解してもらい、信頼を獲得しながら、じっくりと街を再生させていく。一つ一つの手間を決して惜しまないこと。そんな方針を大切にしながら、プロジェクトは現在も進められている。新しいオフィスビル「テラススクエア」が建設中であり、東京電機大学跡地の開発も着々と進行しているが、それらの完成がこの取り組みのゴールではない。

「エリア開発は5年、10年という長期的な視野を持って進めるべきプロジェクトです。その時間のかけ方にこそ、住友商事らしさがあると考えています」

国内外で発揮されている「ハンズオンの文化」

中国・上海の「東方豪園」。戸建39棟、3~4階建ての「タウンハウス」6棟、マンション3棟、商業棟1棟からなる複合型の大型不動産開発の案件だ。日本国内で培った住宅や商業施設開発のノウハウが海外でも生かされている

国内外で発揮されている「ハンズオンの文化」

一方、総合商社ならではの「総合力」が発揮されているプロジェクトが銀座・松坂屋跡地周辺で展開されている「銀座六丁目10地区第一種市街地再開発事業」である。商業施設、オフィス、文化施設、屋上庭園などを含む、地上13階、地下6階の大規模複合施設が、2016年11月のオープンを目指して目下建設中だ。

「これまでのオフィスビルや商業施設の開発と運営の経験に加えて、不動産ファンドの仕組みも導入した新しいモデルのプロジェクトです」

このプロジェクトは、J.フロント リテイリング、森ビル、L Real Estateの3社とともに進められている。通常、このような取り組みにおいて商社に期待されるのは、建設資材の調達や異なる企業間の調整、スケジュール管理といった役割だが、このプロジェクトでは、そういった役割に加え、住友商事グループの社員が、企画・開発、戦略立案、金融機関との折衝に直接携わっている。施設オープン後には、運営にも関わっていく予定だ。ここでもやはり「ハンズオンの文化」が生かされている。

そのスタイルはまた、近年伸長している海外での不動産開発でも踏襲されている。

「現在、米国のサンディエゴ、シカゴ、ヒューストン、中国の上海、蘇州、インドネシアにおいて、オフィスビルと住宅の開発と運営を手掛けており、今後はさらにベトナムやインドなどにも進出していきたいと考えています。各国に現地のパートナー企業がいますが、事業をパートナーに完全に委ねるのではなく、開発、現場管理、販売、運営といったプロセスにも住友商事の社員がしっかりと携わり、事業の経験を蓄積するようにしています」

今後、海外展開の重要性はさらに増していくことになる。「海外投資額を現在の3倍くらいにまで拡大していきたい」と安藤は言う。もちろん、「ハンズオンの文化」を維持したままで、だ。

すべての答えは現場にある

安藤が開発の責任者を務めた東京・勝どきの賃貸・分譲複合型マンション「THE TOKYO TOWERS」。その完成を記念して配布したのがこのワインだ。一般の生活者を対象としたビジネスの経験が今に生きていると話す

すべての答えは現場にある

1982年に入社してから、安藤は一貫して建設不動産ビジネスの分野に身を置いてきた。そのほとんどの期間、携わってきたのは住宅事業だ。一般の生活者を相手とするこの領域で仕事をしてきたことによって、おのずと身に付いた信念があると安藤は話す。

「常に生活者の顔を見て、生活者のニーズを踏まえて仕事をすること。それがなければ、本当に世の中に必要とされる商品を開発することはできないと私は信じています。ビジネスがうまくいっていないときには、いつも現場に足を運んできました。そこにすべての答えがあるからです」

とりわけ、住宅・都市事業部在籍時には、マンションのモデルルームに足を運ぶのが日課だった。そこで顧客と話をし、社員の動きを見ることで、問題点はすべて分かったという。総合商社である以上、現場もまた多種多様である。しかし、ビジネスには常に現場があるという点は変わらない。おのおのの現場から離れてしまったとき、商社の人間は生活者の感覚を失ってしまう──。それが、不動産事業に関わる中で安藤が育ててきた信念だ。

その信念を支えているのが、三代前の本部長がつくった「建設不動産本部事業十監」である。現場主義、顧客主義、現実主義、自律主義などをうたったこの「十監」に、安藤は折に触れて立ち返り、自分が率いる事業の現在を検証している。

住友商事は「街や建物を自らの手でつくる」という現場主義からスタートした。だからこそ、現場主義に商社としての原点を求めるべきであると安藤は言う。そこにこそ時代が変わっても変わらぬ、商社としてのDNAがあるのだと。

住友商事のDNAを背負った建設不動産事業本部の挑戦は、これからも続く。

(敬称略)

※掲載内容は2014年12月時点の情報です。

「大切なのは、どんなときも目の前にある課題から逃げないことです。課題に果敢に取り組む人が評価される。それが住友商事の文化です」変わりゆく時代に、変わらない信念を。

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