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住商スクラム LIVE REPORTS Vol.5 人々と手を取り合い街を生まれ変わらせていく

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「第二の創業の地」で街の価値を向上させたい

武士と職人の街から若者と文化の街へ

 江戸の街づくりは、現在の神田エリアの開拓から始まったといわれる。台地を切り崩したあとに武家屋敷が建ち、大工、左官、鍛冶師、鋳物師といった職人たちが集まり、のちには、江戸の人々に食料を供給する「神田青果市場」がつくられた。
 職人や町人が住んだのは、現在のJR神田駅西側の内神田地区、武家屋敷が立ち並んでいたのは、このエリアを現在東西に走る「神田警察通り」の北側だった。一方南側には、当時頻発していた火災の延焼を防ぐ「火除地(ひよけち)」が広がっていたという。
 明治期になると、主を失った武家屋敷跡や火徐地に学校が次々に建ち、神田は学生たちが通りをゆきかう「若者と文化の街」となった。書店が林立し、出版社や印刷会社が社屋を構え、飲食店が次々に開店し、スポーツ店や楽器店が軒を並べ、神田は「書籍」「スポーツ」「楽器」「飲食」の街として知られるようになった。

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ルーツは不動産事業

 住友商事と神田の縁は、半世紀以上前にまでさかのぼる。1966年、当時大阪に本社のあった住友商事が東京の最初の拠点としたのが、神田美土代町のビルだった(現・住友商事美土代ビル)。神田は住友商事にとって、いわば「第二の創業の地」なのである。
 以後、住友商事はこのエリアに複数の拠点を設け、2001年に中央区晴海に本社を移したのちも、ビル賃貸事業などを続けてきた。数年前からは、分譲マンション「クラッシィハウス」を展開し、住居の提供も始めている。
 しかし、トレーディングや事業投資を主なビジネスとする総合商社が、なぜ不動産なのだろうか。
 「住友商事のルーツは、大阪の港湾開発を手掛ける不動産事業でした。その後今日に至るまで、不動産開発、商業施設の管理・運営、資機材提供などのノウハウを積み重ねてきました。不動産事業は、実は住友商事のビジネスのルーツの一つなんです」
 そう話すのは、住友商事で不動産事業に20年以上携わる櫻内昌雄である。

ビル事業部 櫻内 昌雄

1994年の入社後、一貫して不動産部門で働いてきた櫻内昌雄。関係各所との交渉を繰り返し、東京電機大学跡地の取得を実現させた。「商社マンの仕事の真骨頂は調整です。それが面倒なら、商社を辞めた方がいい」と話す。「神田は古い街という印象がありますが、実は新しいことに常にチャレンジしようとする進取の気性に溢れた街です。そこで働けることに大きなやりがいを感じています」

働きやすく、住みやすく、何度でも行きたくなる街に

 その櫻内らが所属するビル事業部が中心となって現在進めているのが、「神田街づくりプロジェクト」だ。
 「プロジェクトが動き出したのは2011年からです。住友商事錦町ビルと神保町ビルがこの年に竣工しました。そのころから、もっとこのエリア全体の価値を高めることに協力できないだろうか。そう私たちは考え始めました」
 櫻内とともにプロジェクトを推進する上野禎臣はそう説明する。現在、このプロジェクトのランドマークの役割を果たしているのが、2015年に竣工したオフィスビル「テラススクエア」だ。さらに、神田エリアのほぼ中心に位置する東京電機大学の広大な跡地に、地上21階建てとなる大規模複合ビルを建設する計画が始まっている。
 「2020年春に建物が完成すれば、少なからず街に影響を与える施設になります。この場所や周辺の施設、地域の方々と一緒に神田を働きやすく、住みやすく、何度でも行きたくなる街にしていきたい。それが私たちの思いです」(上野)

ビル事業部 上野 禎臣

上野禎臣は2001年の入社。大阪での不動産開発、辻堂の商業施設「テラスモール湘南」の建設などの仕事を経て、15年から神田の街づくりに関わっている。「この業務に関わってから知りましたが、神田は自分の好み、自分の尺度、自分の生き方を持つ人が集まるとても面白い街です。もっともっとたくさんの人に共感してもらい、賑やかな“大人の街”になってほしいと思っています。そのためにわれわれがやるべきことも、まだまだあります」

「これまで」を「これから」につないでいく取り組み

願いはこの街に住む人が増えること

 オフィスビルと多様な店舗と昔ながらの下町が共存する。それが現在の神田の姿だ。最近では、交通の便がよく、大手町、丸の内など都心オフィス街にも近いことから、新たにこの地に住み始める人々も増えている。行きたい街、住みたい街、働きたい街──。上野が言うそのビジョンを実現するには、この場所で働く人たち、住む人たち、訪れる人たちのすべてが、神田を「自分の街」と感じられるような街づくりをしていかなければならない。
 「一番の課題は、昔からここに住んでいる人たちと、新しく来た人たちのつながりをつくることだよ。それがないと、人が住めないオフィスビルだけの街になっちまうだろ」
 そう話すのは、神田で70年以上暮らす紅林公克さんだ。4つの町会を束ねた「錦連合」の会長を務めて30年近くになる。
 「昔は仕舞屋(しもたや=商いをしていない普通の家)が並ぶいい風情の街だったけどな。住民がずいぶん減っちまって、その頃の面影はもうないよ。でも、古いもんにしがみついていてもしょうがないからな。願いは、この街に住む人がもっと増えること。そのためには、俺たちが新しい人をどんどん受け入れていかなきゃな」

神田錦町二丁目町会副町会長 紅林 公克

紅林公克さんは1945年の生まれ。両親が営んでいた旅館を継ぎ、現在はレストランを経営している。「昔の友だちはずいぶんいなくなっちまったけど、神田はまだまだこれからの街だと俺は思っているよ。地元の俺たちと企業、それから新しい住民。それが協力していったら、いろいろなことができるんじゃねえかな」

サラリーマンがみこしを担ぐ街

 この街で長く生きてきた人たちと、この街で働く人たちや、新たに住み始めた人たちをつなぐ役割を果たしているのが「祭」だ。
 江戸時代からの長い歴史を持ち、山王祭、深川祭とともに「江戸三大祭」に数えられる神田祭だが、かつては担ぎ手が減ってみこしを出せない時代もあったという。衰退の一途をたどるかに見えた祭が復活したのは、神田で働く人たちが祭に参加するようになってからだ。
 「会社員の皆さんが毎年担ぎに来てくれるようになって、今はずいぶん盛り返したな。神田の魅力を知りたいんだったら、5月の祭を見に来ることだよ」(紅林さん)
 祭が、昔からの神田とこれからの神田をつなぎ、古くからの住民と新たにこの街に生きる人々をつないでいる。日頃はスーツに身を包み、日本経済の最先端で働くビジネスパーソンが、年に一度、祭の装いをまとって住民とともにみこしを担ぐ。そんな街は、神田をおいてほかにないだろう。

サカキラボ 杉浦 葉子

神田に3年ほど前から事務所を構えるデザイン事務所「サカキラボ」の杉浦葉子さん。現在はテラススクエアの一部となっている博報堂旧本社ビルの屋上にぶどう畑をつくり、神田生まれのワインを生産する計画を進めている。「ワインづくりはストーリーづくりであると私は考えています。神田ならではのストーリーが生まれ、いろいろな人がこの街に集まって、おいしいワインを飲みながら語り合う。それが私の夢です」。自身、ワインエキスパートの資格を持つ。「ワインは人と人とをつなげるアイテム」が持論だ。サカキラボが提供しているイベントスペースは、第一回ワークショップの会場となった。

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コーディネーターとしての不動産事業者

 住友商事がこの街で果たしているのはデベロッパーの役割だが、「デベロッパーの独りよがりでいい街ができるはずはない」と櫻内は言う。
 「もともとここには街があったわけです。そこに歴史性や地域性をふまえた新しい価値を加えて、この街に関わる皆さんとともに未来を描いていくこと。それが、私たちが考える街づくりです」
 祭に積極的に参加するだけでなく、神田で働く人たちに参加してもらってワークショップを開催し、未来の神田を考えるアイデアを募っているのも、「独りよがりの街づくり」を避けるためだ。神田にオフィスを構えるデザイン会社のスタッフなど30名ほどが参加した一回目のワークショップでは、「どんな人たちに神田に来てほしいか」というテーマで、ターゲット像やコンテンツに関する熱い議論が交わされた。
 「私たちだけでは思いもつかなかいアイデアをたくさん出していただきました。クリエイティブな街づくりをしていきたいなら、こうやって皆さんの意見をお聞きする機会が絶対に必要である。そんな確信を持つことができましたね」(上野)
 デベロッパーだけでなく、多様な人々の意見を調整するファシリテーター、もしくはコーディネーターとしての役割が住友商事にはある。櫻内と上野はそう口をそろえる。

ziba tokyo 山田 理湖

1984年に米国オレゴンで誕生したデザインオフィス「ziba」。その日本オフィス「ziba tokyo」が恵比寿から神田に移転してきたのは2013年のことだ。ワークショップ参加者の一人、山田理湖さんはそこでPRの仕事をしている。神田で働くようになって、「神田は裏通りにこそ魅力がある」と感じるようになったという。「大通りからちょっと路地に入ると、思わず入ってみたくなるような素敵なお店がたくさんあるんです。その魅力を何とかして伝えていきたいですね」。誰もが憩える空間があちこちにあるような街が理想と語る。「仕事で神田に通ってきている人たちが、仕事以外の時間を楽しく過ごすことができる。そんな場所が増えるといいですよね」

アートの力が歴史をつなぎ、文化をつなぐ

多様なものを「創造力」で結びつける

 神田の中心に建っていた東京電機大学が千住にキャンパスを移したのは2012年。取り壊されることになっていた大学の校舎で画期的なアートイベントが開催されたのは、その年の11月のことだった。
 「17階の建物の全体を使って、作品展示、トークショー、シンポジウム、ダンス、ワークショップなどさまざまなイベントを開催しました。当初は200人くらいだった参加アーティストが、ひと月ほどの会期中に300人くらいまで増えました。あれが、神田という街が創造力を発揮していく一つの起点になったと思います」
 そう話すのは、今も形を変えながら毎年開催されているそのイベント「TRANS ARTS TOKYO(トランスアーツ東京)」の企画者の一人で、現在は統括ディレクターを務める東京芸術大学の中村政人教授だ。「Trans」には、「横断する」「超える」という意味合いがある。「Arts」が複数形になっているのは、多様な表現、多様な発想、多様な文化をつなげることがこのプロジェクトの狙いだからだ。

 中村教授は、故郷である秋田県大館市の再生を目指すアートプロジェクト「ゼロダテ」をはじめ、これまで数多くのアートプロジェクトに携わってきた。
 「一つの街には、地域コミュニティーがあり、産業があり、古くから住む人がいて、新たにやってきた人たちがいます。しかし、それぞれの間には見えない壁があって、そのままではなかなか混じり合うことができません。そこを“創造力”という力で結びつける触媒の役割を果たすのが、アートプロジェクトであると私は考えています」

東京藝術大学教授 中村 政人

1963年生まれ。大学教授、企業経営者、NPO代表とさまざまな立場でアートに携わっている中村政人氏。閉校した神田の中学校を改修してアートスペースとした「アーツ千代田3331」の統括ディレクターも務める。「街づくりには、地域コミュニティーの側面、産業の側面、アートの側面、その3つが必要であると僕は考えています。住友商事には産業面での非常に大きなパワーがあると感じます。力を合わせてこれからの神田をつくっていきたいですね」

神田の「ミーム」をどう受け継いでいくか

 人間一人一人の身体にDNAがあるように、環境や文化に宿る遺伝子もある。それを「ミーム」と呼んだのは、生物学者のリチャード・ドーキンスだ。中村教授は、街づくりにはその考え方が非常に重要であると言う。
 「街が移り変わっていっても、ミームは受け継がれています。今の神田にどのようなミームが宿っていて、それをどう進化させ、次世代に受け継いでいくべきか。私たちはそのことを真剣に考えなければなりません」
 自身、神田に住んで20年。「歴史軸の深さ」がこの街の大きな魅力だと感じている。歴史の中で積み重ねられてきた文化や人々の営みを、新しいアイデア、新しい商業活動、新しいライフスタイルとどうなじませ、新しいミームとして未来に渡していくか。その取り組みの場として、神田ほど適した街はない。そう中村教授は話す。
 「神田は東京都市部の中心であり、日本の中心であると言ってもいい。この街でのチャレンジは、今後の日本の都市や地域での活動の指針になりうると私は思っています」
 これから日本の人口が減っていけば、暮らし、働き、人々と交わり、創造するといった日々の営みを職住が近接した空間で送ることができる街づくりが求められることになるだろう。神田は、そのような未来型の街をつくっていく試みの場でもある。櫻内は言う。
 「“未来に向けて何かをクリエイトする”という点で、不動産事業とアートには明確な親和性があります。クリエイティビティこそが、神田という街の価値を高める鍵になる。そう私たちは信じています」

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2020年はゴールではなく通過点

 2020年、東京電機大学跡地に新しいビルが建つ。しかし、それはゴールではなく一つの通過点だ。エリアの中心に位置し、商業、文化、コミュニケーションなどさまざまな用途に活用できる場所が生まれたのちに、その施設をどう有効に使い、どう神田全体をより魅力的な街にしていくか──。そのビジョンは、2020年に向かうプロセスの中で徐々に明確になっていくはずだ。
 この街で暮らす人たち、この街で働く人たち、この街に足繁く通う人たち。その人たちの心の中にある神田への思いに耳を傾け、形にしていくのが住友商事のこれからの仕事である。建物をつくるだけではない。「みんなで街をつくる」ための取り組みが、これからも続いていく。

【関連リンク】神田錦町界隈とクリエイティブな活動をする人たちを繋ぐウェブマガジン "ensemble(アンサンブル) "

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Vol.5 「街づくり」篇
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Vol.5 「街づくり」篇
日本経済新聞 掲載
(2017年2月20日)