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住商スクラム LIVE REPORTS Vol.3 医薬作りをサポートし、日本の未来を支える

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製薬・創薬支援によって国家的課題に向かい合う

人々を内からむしばむ脅威

 現在の日本における最大の脅威とは何だろうか。災害や経済危機が「外からやってくる脅威」だとすれば、私たちを「内からむしばむ脅威」が病気、とりわけがんである。国立がん研究センターが発表した「2016年のがん統計予測」によれば、16年中のがん罹患数は101万200例、死亡数は37万4,000人に達すると予想されている。
 こうしたがん疾患の増加は、患者本人やその家族を苦しめるだけでなく、医療費増大や労働力低下という日本社会の課題にも大きく関わる。がんを早期に発見し、適切な治療を行えば、病に苦しむ人々やその家族を救うことができるだけでなく、治療に要する高額な費用が減り、財政負担も軽減する。また、がんによって亡くなる人が減少すれば、日本の働き手の減少を食い止めることにもなる。がん患者を減らし、がんによる犠牲を抑制することは、極めて重要な国家的課題ということだ。

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製薬・創薬を支援するビジネス

 住友商事グループは、この課題に製薬および創薬支援という形で挑んでいる。医薬品生産の原料となる化学合成品、新薬開発に使われる研究機器、さらには医薬品のライセンスといった知的財産を海外から輸入・導入し、日本国内の製薬メーカー、研究所、大学に提供する。それが住友商事グループの医薬ビジネスの一つのモデルだ。
 「事業会社である住商ファーマインターナショナル(以下、SPI)がフロントに立って、薬の製造と新しい薬を創り出す活動をサポートしています。グローバルなネットワークの中から、原料、機器、技術、ノウハウなどの最適な供給者を見つけ、日本の法律に適合した形で国内の取引先に安定的に提供できるのが、私たちの最大の強みです」
 そう話すのは、SPIを主管するメディカルサイエンス部の北村俊也である。

メディカルサイエンス部 北村 俊也

1990年入社以来、一貫して医薬畑で働いてきたメディカルサイエンス部企画&統括チームリーダーの北村俊也。7年間のミラノ駐在では、在米国代謝物解析サービス会社の欧州向け商権の拡販に奮闘した経験を持つ。「新しい薬はそう簡単にできるものではありません。私たちが提供した原料が新薬となって世に出たときの喜びは、何ものにも代えがたいものです」

グローバルネットワークの力で医療費削減に寄与する

 住友商事グループの医薬ビジネスは、基礎研究から始まり、原料の合成、臨床試験、申請・登録、販売に至る医薬品開発の流れの川上から川下までをほぼ網羅している。これは、総合商社としては非常に珍しいモデルだ。さらに、特許期間の終了によって比較的安価で販売することが可能なジェネリック医薬品の製造にも原料を提供している。
 現在、日本の国民医療費は40兆円を超えており、そのうちおよそ10兆円を占めるのが薬剤費だ。その削減策として期待されているのがジェネリックである。政府は、2018年までに薬の8割をジェネリックにするという目標を掲げている。
 北村は、そのような状況を踏まえながら、こう説明する。
 「薬を安価で提供するには、原料のコストも抑えなければなりません。安価で、かつ高品質の原料を世界中から調達するためには、広範な情報網と調達網が必要となります。その点、住友商事グループは、総合商社ならではのネットワークと、医薬に特化したSPIのような事業会社が持つ専門性を駆使することで、日本の医療費削減だけでなく、世界の人々の健康に寄与することができると考えています」

メディカルサイエンス部 川本 哲也メディカルサイエンス部 東川 正人

メディカルサイエンス部の東川正人(右)と川本哲也。東川は2001年に大学院卒で入社した。「お客さまの困りごとを解決して、信頼を獲得することがこの仕事の醍醐味」と語る。2010年入社の川本は、中国での2年間の研修を経て4月から東京オフィスで働く。「住友商事は風通しのいい会社です。縦の関係と横の関係がうまく組み合わさって相乗効果が生まれていると感じています」

パートナーシップの力で医療の世界にイノベーションを起こす

尿検査によってがんを発見する

 国内の優れた製品や技術を海外に輸出し、海外から原材料や資源を輸入する。総合商社の重要な役割は、そのような貿易ビジネスによって日本国内と海外とを「結ぶ」ことにある。事業が多角化した今日にあっても、そのトレーディングパワーが総合商社の一つの強みであることに変わりはない。その力ががん医療の分野で発揮されている事例がある。「尿中バイオマーカーによるがん検査」の研究がそれだ。
 尿中の物質によってがんに罹患しているかどうかを判別するというこの画期的研究について、SPIの米川雄基は次のように説明する。
 「糖尿病なら血液中の糖(グルコース)、高脂血症ならコレステロールなど、人間の体内の成分にはその人が病気であるかどうかを判断できる“しるし”があります。これをバイオマーカーといいます。がん検査では、これまでは血液検査や画像診断が必要でしたが、尿中の成分からがんのバイオマーカーを特定できれば、簡易に検査サンプルを取得することができ、体に負担をかけず検査を行うことができます」

住商ファーマインターナショナル 創薬支援部 米川 雄基

大学院時代はバイオサイエンスを研究していた米川雄基。コンサルティング会社を経て、2011年に住商ファーマインターナショナルに入社した。「研究には失敗がつきものです。研究環境の質を向上させて、研究の成功確率が少しでも上がるよう尽力したい。それが現在の目標です」

時宜を得た提案が技術を開花させる

 バイオマーカーの研究は、日立製作所の依頼により、SPIとの協力体制で進められている。2社のパートナーシップは、以前から研究を続けていた日立製作所にSPIが提案することによって成立したものだ。
 「海外には、研究に用いる検体を保有するバイオバンク会社がたくさんあります。また、その検体を利用してバイオマーカーを探し出すユニークな分析技術をもった企業も数多くあります。私たちが、それらの会社の技術やノウハウを国内の企業や研究所に紹介する活動を続けてきた中で、日立製作所の研究に合致するご提案ができることに気づきました」
 そう話すのは、SPIの小関さゆりである。その提案は、日立製作所側にとっても渡りに船だったという。ヘルスケア分野の研究に長く携わってきた日立製作所の坂入実氏は、「SPIからの提案がなければ、研究の進展はもっと遅々としたものになっていたでしょう。まさに絶好のタイミングで私たちにとって必要な情報をいただけたことで、この開発が大きく動きました」と語る。

住商ファーマインターナショナル 創薬支援部 小関 さゆり

1992年に住友商事に入社し、その後、住商ファーマインターナショナルの社員となった小関さゆり。文系の出身だが、周囲からのサポートによって医薬分野の専門知識を身につけてきたと話す。「医薬の分野は日々発展しています。新しい技術を間近で見て、それに仕事として携われることにいつもわくわくしています」

価値を生み出すためにともに働く

 「この研究には、健常者やがん患者の尿検体が必要ですが、それを日本の医療機関から集めると、非常に時間がかかります。それに対し、SPIから紹介されたドイツや米国のバイオバンクの検体は“研究材 ”として購入でき、短時間で入手することが可能です。加えて、臨床情報なども提供してもらえることがわかりました。また、非常に高いレベルの解析技術やデータベースを持つ米国のベンチャー企業も紹介いただき、研究を大きく進展させることができました」(坂入氏)
 グローバルネットワークを駆使し、海外と国内を結ぶ──。総合商社が最も得意とする力がここでも発揮されたわけだが、単に「結ぶ」だけでは終わらないパートナーシップが、この研究開発をさらに前進させている。
 現在、米川をはじめとする数人のメンバーがこの研究に携わり、2社の協力体制で研究が進められている。仲介や紹介にとどまらず、自ら事業や

プロジェクトに参画し、そこで価値を生み出すためにともに働く。住友商事に根づくそんな「ハンズオンの文化」が生かされているわけだ。

日立製作所 研究開発グループ 技術顧問 坂入 実 氏

日立製作所・研究開発グループの坂入実氏。「研究を進めてきて、住友商事は非常にポテンシャルの高い会社であることがよくわかりました。今後いっそうのパートナーシップの発展に期待しています」

「自前主義」からパートナーシップへ

 この研究の直近の成果が16年6月に発表された。健常者、乳がん患者、大腸がん患者のそれぞれの尿中の代謝物の解析を行い、そこからバイオマーカー候補となる物質を絞り込むことに成功した、というのがその内容である。
 今後、この方法の精度がさらに高まり、一つの医療ソリューションとして確立すれば、家庭で気軽にがん検査ができるようになり、がんの早期発見が可能になる。それによって、死亡率を引き下げ、医療費も抑制することができる──。研究メンバーたちが抱くビジョンだ。
 「日立グループは、社会の仕組みを刷新し、それを支える“社会イノベーション事業”を推進しています。がん医療研究を含むヘルスケアもその一環ですが、イノベーションはグループの中だけで創り出せるものではありません。“自前主義”の文化を脱し、社外のプレーヤーと適切なパートナーシップを組んでいくことがイノベーションにつながる。私はそう考えています」(坂入氏)
 がん医療の分野にイノベーションをもたらしつつあるこの研究を進展させているのが、まさしく住友商事と日立製作所のパートナーシップにほかならない。

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総合商社の情報力と調達力がこれからの医療を発展させる

がん細胞を駆逐する画期的医療技術

 日進月歩の勢いで進むがん医療の研究。その最先端にいる研究者の一人が、東京大学名誉教授であり、ナノ医療イノベーションセンターのセンター長も務める片岡一則氏である。片岡氏は、血管の中を通ってがん細胞に抗がん剤を送り届け、ピンポイントでがん細胞を駆逐する画期的な医療技術「ナノマシーン」の研究で知られる。正常な細胞には抗がん剤の力が働かないため、副作用の心配が非常に少ない。また、体内に常駐させておくことによって、がんの転移をごく初期の段階で見つけ再発を防ぐことができる──。そう聞けば、この技術がいかに画期的なものであるかがわかるだろう。片岡氏は話す。
 「ナノマシーンが本格的に実用化すれば、がんによる死亡を減らすことが期待できるだけでなく、がんにかかっても長期入院したり、副作用対策をしなくてもよくなるので、仕事を続けることが可能になります。いわば、がんが“普通の病気”になるわけです」

ナノ医療イノベーションセンター センター長 東京大学名誉教授 片岡 一則 氏

がん医療研究の第一人者である片岡一則氏。「日本の課題は、単に医療費を抑制することだけでなく、“抑制しながらも質を上げること”です。そこで日本の技術や研究の底力が試されると思います。住商グループには、これからも医療研究や技術の発展をしっかりサポートしていただきいと思います」

総合商社は「研究コンシェルジュ」になりうる

 この研究には、実験動物の体内のがん細胞の動きをモニタリングする作業が必要となる。動物の体を切開せずに体外から細胞をモニタリングできる光イメージング装置を提供しているのがSPIだ。
 「総合商社の情報力と調達力は、これからの医療研究にはますます重要となるでしょう」と片岡氏は言う。
 「研究に必要な機器、検体、技術などを世界中から調達し、信頼できる形で継続的に提供してくれる。また、研究者のニーズを聞いて、それにふさわしいソリューションを見つけてきてくれる。こうしたことのできるプレーヤーは、総合商社以外にないでしょう。いわば“研究コンシェルジュ”のような役割を、私は住友商事グループに期待しています」
 医療の技術を進歩させ、医療に関するさまざまな問題を解決するのは、研究機関であり、医療現場の仕事である。総合商社の役目は、それを間接的に支え、医療の発展に寄与することだ。そのサポート力が、医療費増大や人口減という日本が抱える国家的課題を解決する一助となる。
 現在病と闘っている人、現場の医師、そして将来病と闘う可能性のあるすべての人々──。彼らの力となるために、彼らの目には見えぬところで、住友商事グループの社員は今日も努力を続けている。

「スクラム」の力で、未来へ

※本文中のがんのバイオマーカーに関する研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の医療分野研究成果展開事業、産学連携医療イノベーション創出プログラムの支援によって実施されたものです。

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