REPORT 02 新機軸を打ち出す――インドネシアを支える「発電所リース」プロジェクト

 5年間にも及ぶプロジェクト中断の憂き目に遭いながらも「タンジュン・ジャティB石炭火力発電所」(1、2号機)を完成させ、増設(3、4号機)まで果たした住友商事(第1回第2回)。この発電所がインドネシアの基幹発電所として発展するまでには、強い信念の下、困難を克服していった数多くの逸話がある。(掲載日:2012年3月27日)

ひたすらに前へ――部品の山、そして法制度の壁を越える

  • 前回の記事へ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次へ

5年間の中断で残された自動車30万台分の鉄製部品

 「発電所の建設中断から5年後の2003年5月、ついに建設プロジェクトを再開させることができた。しかし、待っていたのは何十万トンにも及ぶ仕掛かり品の山だった」――。インドネシア住友商事社長の兵頭誠之氏は、その時の状況をこう振り返る。

 当時のプロジェクト担当者たちは「この国に絶対必要な発電所だ」という揺るぎない信念の下、5年間中断していた「タンジュン・ジャティB石炭火力発電所」(TJB)1、2号機の建設を再開させた。

 インドネシア政府との再開交渉と並行して、住友商事は膨大な時間をかけ、気の遠くなるような作業を通じて、中断によって生じた鉄製部品や仕掛かり品を1つ1つ洗い出し、的確な保管メニューを作成、実行していった。いつプロジェクトを再開してもいいように、である。中でも鉄製部品の重量は27万トンに及んだ。自動車1台の鉄鋼使用量を900キログラムとすると、30万台分に相当する量だ。

 それでも、5年間という歳月を経れば、そのまま使えないものも当然出てくる。

 「仮に自動車の製造を考えた場合、全ての部品をバラバラの状態で保管して、5年後に組み立てたとしたら、果たして車は動くだろうか。鉄はさび、電子部品などは博物館入りの代物と化しているかもしれない。それは、発電所建設という大規模プロジェクトでも同様だ」。兵頭氏はこう説明する。

 そのため、プロジェクト再開に当たっては、部品の作り直しなど数多くの予期せぬ対応に大変な労力を要した。しかしプロジェクト担当者たちの考えは常に前向きだった。普通ではあり得ない貴重な経験。当時の若手を含め、住友商事にとって大きな財産となった。

 また、ファイナンスリースというTJBのビジネスモデルで「運命共同体」となった国営電力会社であるペルサハーン・リストリク・ネガラ(PLN)とは、このプロジェクトを成功させるために、まさに「がっぷり四つ」に組んで協働した。住友商事グループにとっても、インドネシア政府やPLNにとっても初めてのビジネスモデルであり、そのために暗中模索し、すれ違うこともあったが、膨大な契約の交渉や許認可の取得などの困難も、全て一緒に乗り越えていった。

 こうして住友商事グループは、2006年10月に1号機を、翌月には2号機を完工した。「お客様が何を求めているかをプロジェクトに関わる社員全員で徹底的に考え、その実現に向け、諦めることなく、愚直に、ひたすら前を向いて歩んでいった結果だ。そして5年間の中断期間を含め、融資者や協力企業など社外の方々の支援とインドネシア政府関係者の理解があったからこそ、成し遂げられた」(兵頭氏)。プロジェクト開始から実に12年の歳月が流れていた。

 1、2号機を完工した際、プロジェクトに携わった外国企業のある責任者はこう言ったという。「日本人はやはりすごい。一旦やると決断したことは、どんなことがあってもやり遂げる。日本が戦後、見事に復興できた理由も分かる。このプロジェクトの一員となれたことは非常に幸せだった」――。

 こうした1、2号機での実績が評価され、住友商事はインドネシア政府から3、4号機増設の打診を受けたのである。


煙突の左にある1、2号機のボイラーは北米企業のバブコック・アンド・ウィルコックス製


高さ240メートルの煙突から上がるのは水蒸気が冷えたもの。煙突にはモニタリングシステムが搭載されており、環境基準を常時チェック。脱硫装置の設置により硫黄酸化物(SOx)は95%除去

  • 前回の記事へ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次へ

REPORT 01 領域を広げる――カナダ発・世界を目指す鉱山機械ビジネス

REPORT 02 新機軸を打ち出す――インドネシアを支える「発電所リース」プロジェクト

  • 日本の底力を示す――インドネシアで電力不足解消にまい進
  • 継続は力なり――強い信念で型破りのビジネスモデル構築
  • ひたすらに前へ――部品の山、そして法制度の壁を越える
  • 浮利を追わず――ビジネスの王道を歩み、絆を育む

REPORT 03 日本流を世界へ――“農協型サービス”をルーマニアから広げる農業ビジネス

REPORT 04 生活を支える――消費行動の流れを取り込むリテイルビジネス

Topへ戻る