VOL.04 Solar Wind Power 「つなげる力」で新たな価値を生み出す

つなげる力──。「総合商社が持つ力とは何か」との問いに、多くの住友商事の社員はそう答える。国と国をつなぎ、企業と企業をつなぎ、商品とユーザーをつなぐ。そのような力をあらゆる場面で発揮できるのが総合商社なのだと。住友商事において、その「つなげる力」が発揮されている代表的な事業分野の一つが、太陽光や風力といった再生可能エネルギーを使った発電事業である。そこで住友商事は、何と何をつなげ、どのような価値を生み出しているのだろうか。

複数の企業をつなぎ共同でCSR活動を推進する

88年の入社以来、一貫して発電事業の分野に携わってきた猪塚竜生。「大きな仕事が終わったとき、一緒に働いてきた仲間たちとおいしいビールを飲む瞬間が最高」と話す。4人の家族が何よりの宝物だ。

複数の企業をつなぎ共同でCSR活動を推進する

住友商事が大阪市の臨海部にある埋め立て地「夢洲(ゆめしま)」の利用権を三井住友ファイナンス&リースとともに獲得したのは、2010年のことだった。ゴミ焼却場から出た焼却灰を埋め立ててそれほど時間が経っていないこの場所は、地中からガスが発生し、地盤が不安定で沈下する「使えない土地」だった。そこに当時としては国内最大となる巨大な太陽光パネルを設置し、地域における環境貢献のシンボルにする。それが住友商事のアイデアだった。

「ここで発電した電気を電力会社に売却することで、多少の収益は生まれます。しかしこの事業は、CSR(企業の社会的責任)に主眼を置いたプロジェクトである。それが当初からのコンセプトでした」

そう話すのは、このプロジェクトを中心で担った環境エネルギー事業第一部の猪塚竜生である。「大阪ひかりの森」と名付けられたこのプロジェクトの大きな特徴は、太陽光パネルを複数の企業で分割所有する点にあった。

「このメガソーラーは、10メガワットの発電能力を持っています。そのパネルを500キロワットごとに分割することで、さまざまな企業にプロジェクトに参加していただく。それが私たちが立てたプランでした」(猪塚)

一社内でCSR活動を完結させるのではなく、複数の企業をつなぎ、複数の企業が共同で進めるCSRの枠組みをつくる。そのアイデアに賛同したのが、住友電気工業、レンゴー、日立造船、ダイヘン、NTTファシリティーズ、住友倉庫、大阪信用金庫、ジュピターテレコムの8社だった。一見して分かるように、業種も規模も異なる企業の集まりである。この多様性にプロジェクトの性格がよく表れている。

「設置場所が悪条件であるため、このプロジェクトには一般的なメガソーラー事業よりも大きなリスクがともないます。そのリスクを分散しながら、それぞれの企業が太陽光発電への取り組みを自社のCSR活動として独自に組み立てていく。そして、その結果として、取り組み全体を大きく育てていく。それがこのプロジェクトの新しさであると私たちは考えています」(猪塚)

環境貢献プロジェクトと市民や地域をつなぐ

国内の太陽光発電事業を中心で進める平野貴之。94年の入社後、ドイツでの駐在経験を経て、現在は大阪ひかりの森に加え、苫小牧、西条、北九州などで推進中の太陽光発電事業を担当している。「粘り強さが評価されるのが住友商事のいいところだと感じています」

環境貢献プロジェクトと市民や地域をつなぐ

同じく、このプロジェクトに参加した環境エネルギー事業第一部の平野貴之は、「メガソーラーを設置するに当たっては、住友商事がスペイン、フランス、イタリアなどで展開している太陽光発電事業の経験が大いに役立ちました」と話す。再生可能エネルギー先進国ドイツに太陽光発電のマーケットが起ち上がった2000年代半ば、ドイツに駐在して太陽光パネルの販売や事業開発を行っていたのが平野である。

海外における事業経験を国内での活動につなげ、業種の異なるさまざまな企業をつなげる──。住友商事がこのプロジェクトで発揮した「つなげる力」は、しかしそれだけではなかった。この施設から生まれた電力から得られる収益の一部は地元の此花(このはな)区における環境教育や、市民の環境創造活動の資金として使われることが決まっている。つまり、プロジェクトを地域や市民とつなげていくという点でも、住友商事の力が発揮されているということだ。

再生可能エネルギーを使った発電事業は、資源を枯渇させることがなく、CO2などの温暖化ガスもほとんど排出しないという点で、その取り組み自体が一種の環境貢献と考えられる。それをほかにあまり例のない「共同CSR」のプロジェクトとし、その活動を広く地域や市民とも共有していく。そのモデルを実現させたのが、住友商事の「つなげる力」だった。このプロジェクトは、今後20年にわたって続けられる予定となっている。

「初心者」の連携で挑んだ南アフリカの風力発電事業

達成感のある仕事ができること、周囲を巻き込んでいける仕事ができること、海外で働けること──。就職活動時に掲げた3つのビジョンをすべて満たしていたのが住友商事だったと話す若林美由紀。南アの風力発電事業を中心で担う。

「初心者」の連携で挑んだ南アフリカの風力発電事業

「この国で大規模な風力発電事業が行われるのは、これが初めてでした。住友商事にとっても、パートナー企業にとっても、大きなチャレンジでした」

環境エネルギー事業第二部の若林美由紀はそう話す。急速な経済発展と人口増加が進み、電力不足が深刻化している南アフリカで、国家プロジェクトである再生可能エネルギー発電の入札が発表されたのは11年8月。そのうちの風力発電事業の一部を住友商事が落札したのは、11月のことだった。東ケープ州に100メガワットの風力発電所を建設し、運営する──。それが事業の内容だった。

正確にいえば、事業を受注したのは南アの開発事業者であるレインメーカー社、BEE企業、住友商事の3社の連合体であり、出資比率において60%を占める住友商事がその連合体の中心となった。BEE企業とは、黒人層の地位向上を目指す南アの政策であるBEE(ブラック・エコノミック・エンパワーメント)の対象となっている企業のことだ。さらに、風車メーカーであるドイツのノルデックス社も重要なビジネスパートナーだった。住友商事の役割は、それら共同で事業を進めるパートナー同士をつなげることにあったが、問題は、そのすべてのプレーヤーが南アでの風力発電ビジネスの「初心者」であったことだ。

「住友商事には、すでに日本、米国、中国における風力発電事業の経験がありました。しかし、南アでの風力発電事業は初めてだったので、何がリスクであり、そのリスクに対処するにはどうすべきかを一つ一つ見極めていかなければなりませんでした。この国における風力発電事業自体が初の取り組みだったわけですから、もちろんほかの企業も同様でした」(若林)

リスクの高い分野でこそ力が発揮される

住友商事が手がける南アの風力発電所は「ドーパー・ウインド・ファーム」と呼ばれる。「ドーパー」とは写真に写っている牧羊のこと。14年7月の商業運転開始に向けて、風車の設置が進んでいる。

リスクの高い分野でこそ力が発揮される

ここで発揮されたのも、やはり「つなげる力」であった。つなげられたのは、住友商事社内におけるさまざまな機能である。

「ファイナンス、法務、リスクマネジメントなどを専門とする各部署が、それぞれの知見や経験を持ち寄って、南アの現状を分析してくれました。また、南アにおいて鉄鋼原料ビジネスを住友商事が20年近く続けていたことも、重要な経験値として生かされました」(若林)

総合商社が持つ総合力が発揮されるのは、まさしくこのような場面だ。他分野での幅広いビジネスの経験や専門的知識が新しい案件に生かされ、事業を形つくるのに役立てられる。そこに総合商社ならではの力がある。

南アにおける風力発電事業は、二重のリスクへの対応が求められる。南アという新興市場にまつわるリスク、そして、この国で初めてとなる大規模風力発電所を建設・運営することにまつわるリスクである。社内外の、さらには国内外のパートナーを適切に「つなげる」ことで、そのリスクを可能な限りコントロールしていき、事業を成功に導く。そのような力が発揮されているのが、この南アの風力発電事業であるといっていい。

「この国で初めての風力発電所をつくる。その共通のビジョンがパートナー同士をつなげ、まとめるのに役立ったと感じています」

現在もプロジェクトを中心で担い続けている若林はそう話す。

「大阪ひかりの森プロジェクト」は、過去に例のないコンセプトの太陽光発電事業であり、南アにおける風力発電もまた、これまで誰も取り組んだことのない事業である。

「事業のノウハウの確立していない分野や、リスクの高い分野でこそ、住友商事の力が生かされると私は考えています」

そう猪塚は言う。住友商事の「つなげる力」は、これからも未知の事業分野、未知の市場で発揮されていくに違いない。

(敬称略)

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