社長メッセージ(アニュアルレポート2011より抜粋)
去る2011年3月に発生した東日本大震災では、極めて多くの方々が被害に遭われました。被災された方々に心よりお見舞いを申し上げるとともに、亡くなられた方々に対して深く哀悼の意を表します。当社では今後も、被災された方々並びに被災地の一日も早い復興に向け、全社をあげて支援を続けていく所存です。

2009年4月から2011年3月までの2年間、当社は中期経営計画「FOCUS'10」を掲げ、どのような環境下でも持続的な成長を可能とする企業体質や成長モデルの構築を目指してきました。定性面では、「メリハリある成長戦略の着実な実行」「健全性・効率性の徹底的な強化」「価値創造力を高めるための人材及び組織づくり」を掲げ、バランスシートマネジメントをはじめ、様々な施策に取り組んできました。その結果として、定量面では、2010年度の純利益の当初目標である1,600億円を上回る2,027億円という成果をあげることができました。またリスク・リターンについても、計画期間の2年平均10%程度という目標に対して12.7%と、目標を上回る実績をあげています。
投融資については、収益基盤を強化するために、資源・エネルギー分野やメディア・ライフスタイル分野などを中心に2年合計で6,000億円と、過去最大に迫る積極的な投融資を実施しました。こうした積極的な投融資を行いつつも、積極的な資産の入れ替えを実施し資金の回収に努めました。結果として、2年合計のフリーキャッシュ・フローの黒字化を実現し、現預金の増加を除けば、総資産をFOCUS'10開始時(2008年度末)の水準に維持するという目標も達成しました。
このように、FOCUS'10で掲げた目標については、満足のできる結果を出せたと認識しています。一方で、依然として収益性と成長性に乏しいビジネスが残っていることも事実であり、それらのビジネスに多くの貴重な資産と人材が投入されているという課題も同時に浮かびあがってきました。こういった課題を踏まえ、2011年4月から開始した新中期経営計画「f(x)」では、従来以上に中長期ビジョンを明確にし、それに基づいた全社的見地からのリソースマネジメントを強力に推し進めていきます。

f(x)の定量目標については、2011年度の純利益を2,200億円、2012年度の純利益を過去最高の2,600億円とし、2012年度のリスク・リターンを15%以上と定めました。バランスシート計画では、2年間で1兆1,500億円の資産を積み増します。将来にわたって安定的に収益を伸ばしていくために、各地域と分野の既存ビジネス・新規ビジネスにバランスよく投資を行っていき、新規投融資の金額は、2年合計で5,800億円を計画しています。分野別では資源・エネルギー分野や環境・新エネルギー分野に注目しており、地域別では、今後成長が期待できるアジアなどの新興国や北米など、人口の増加が見られる地域に注目しています。
このように資産を積み増す一方で、FOCUS'10から引き継いできた課題の解消をするとともに「ビジネスモデルの高度化・転換」を実施し、大口案件を中心に、同規模の資産削減を行うことでバランスシートをコントロールし、総資産は2010年度末のレベルとします。有利子負債は、積極的に資産の削減を進めていく中で2,500億円減少し2兆8,000億円程度、ネットのDERは1.5倍程度となる見込みです。また、フリーキャッシュ・フローは、2年合計で黒字となる見通しです。
私は今年のキーワードとして“Growing Together”という言葉を掲げていますが、これはf(x)で目指している「地域・世代・組織の枠組みを越えて成長すること」を意味する“cross-boundary growth”をいい換えたものにほかなりません。f(x)は、FOCUS'10の基本方針を踏襲しながら、時代が求める「ビジネスモデルへの高度化・転換」を実行し、私たち一人ひとりが全てのパートナーとともに様々な枠組みを越えて成長していこう、という思いを込めて策定したものです。
「高度化」とは、地域や分野は同じでも、パートナーに高い価値を認めてもらえるように当社の機能を高めていくこと、「転換」とは、地軸や産業構造の変化に対応して、ビジネスモデルを思い切って変えていくことを意味します。どのようなビジネスにも「地軸」「産業構造軸」「機能軸」という3つの軸で語れる「立ち位置」があります。ビジネスモデルの高度化と転換は、いい換えれば私たち自身の立ち位置を変えることです。新たな立ち位置によって次世代の人材へ成長機会を提供することができますが、これは経営理念で掲げる「活力」「革新」の企業風土の醸成や、「人間尊重」の経営姿勢の実践であると考えています。f(x)では、この「ビジネスモデルの高度化・転換」に徹底的にこだわっていきたいと考えています。

f(x)においては、このような「ビジネスモデルの高度化・転換」を、スピード感を持って実現するために、「4つのキーアクション」を実行します。
ビジネスモデルの高度化・転換を実現するためには、優先的に経営資源を投入していく分野を特定し、「戦略的なリソースマネジメントを加速」することが必要です。リソースマネジメントは、優秀な人材に、さらなる成長の場、活躍の場を与えるうえでも極めて大切であると考えています。
戦略的なリソースマネジメントを進めるための原動力となるのが「総合力」です。当社の大きな強みである「総合力」を、世界中の様々なパートナーとの連携によって「グローバルベースで深化」させ、新しい価値創造につなげていきます。
また、「総合力」を発揮するために必要となるのが、現場の中長期ビジョンの「見える化」です。それぞれの現場が有効に機能するための中長期のビジョンとプランをグループ全体で共有できるような仕組みを創り上げたいと思っています。当社ではすでにFOCUS'10の中で、地軸・産業構造軸・機能軸などの多様な視点から中長期ビジョンを見える化するための「ありたい姿からのアプローチプロジェクト」を実施してきました。f(x)ではこの成果を経営プロセスに落とし込み、経営レベルでの議論に展開していこうと考えています。
以上に掲げた3つのアクションを実行していくうえで一番大切なものが「人材」です。もちろん、人材育成に向けた取り組み自体は過去何十年にもわたって当社が続けてきた取り組みではありますが、とりわけ海外の優秀なスタッフの育成・活用に重点を置き、いろいろなプログラムを組んで、「全社レベルでの人材マネジメントを強化」していきます。
当社は広く社会に貢献するグローバルな企業グループを目指しています。そのためには、常に新たな価値を創造し、その対価として、適正な利益をあげていくことが必要であると考えています。得られた利益については、将来に向けた投資の原資として、また株主の皆様への配当として、その間のバランスをとって経営していくことが大変重要と考えています。このような観点から、配当性向については20~30%を目安としています。
同時に私は、社会から尊敬される企業であり続けることが住友商事にとっての企業価値の一つであると考えています。適正な利益を得るために事業活動に邁進するのみならず、住友商事という一つの共同体として、その事業活動を通じて社会に様々な形での貢献を行っていきたいと考えており、そのための努力を惜しみません。そうした活動実績がまた当社の企業価値を高めていくことになると考えています。
このたびの震災に際しては、私自身、被災された東北地方を訪問し、想像をはるかに超える状況に言葉を失いました。しかし、地域や取引先の救援・復旧を最優先して頑張る当社グループの社員の姿を目の当たりにし、大変勇気付けられました。こうしたときこそ、様々な分野・地域で多様なビジネス基盤を持つ総合商社の強みを活かした支援を行うことができるはずです。今後も我々として何ができるかを考え続け、できる限りの息の長い支援を続けていきたいと思います。復興においても新中期経営計画で掲げる“cross-boundary growth”を実現し、社会のため、パートナーのため、良き企業市民として社会に貢献していきたいと思います。
社会から尊敬される企業であり続けるため、我々のパートナーや世界中の人々とともに力を合わせ、持続的な成長を遂げていきたいと、私は心からそう思っています。
2011年8月
取締役社長
加藤 進