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広報パーソン 世界探訪記

変わりゆくミャンマーの「今」

  • ミャンマー
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2017年1月掲載

報道チーム 風間 美希

2009年入社の広報部員。入社後8年間は主に事業投資のリスクマネジメント関連業務に携わり、16年8月に広報部に異動。現在はメディア・生活関連事業部門内のICT、ライフスタイル、環境・インフラ事業部門内の物流事業、資源・化学品事業部門内の資源・エネルギー関連の報道業務を担当。趣味はもっぱら旅行に行くこと(主に南国)。旅先で必ず行うことは、大量の買い物と数百枚にわたる写真撮影。

2016年3月、ミャンマーにおいて、アウンサンスーチー氏率いる新政権が発足した。そして10月には、米政府による経済制裁が全面解除された。「アジア最後の経済フロンティア」として注目を集める同国に、米国をはじめ外資企業の進出がさらに加速するだろう。

住友商事は、15年度より開始した中期経営計画で、この国を今後の発展が期待される地域として「全社育成地域」に指定、現在総勢50人近くの社員を派遣している。10月初旬、当社が手掛ける事業会社を訪問する機会を得た。世界中から脚光を浴びるこの国に住友商事がどのように関わっているのか、紹介したい。

発展し続けるティラワ経済特別区

ヤンゴン市内から、車で走ること約1時間。徐々に車と建物の数が減っていき、辺り一面広大な平地に、昔ながらの東南アジアの情景をほうふつとさせる高床式の住居がばらばらと建つ。その光景の先に、ずらりと並ぶ何本もの旗が見えた。日本・ミャンマー両国の国旗、そしてティラワ経済特別区ゾーン Aの開発・運営を手掛ける現地事業会社MJTD(※1)の旗だ。ティラワ経済特別区ゾーン A内で開発が進んでいる工業団地は、2014年より日本・ミャンマー両国の政府並びに住友商事をはじめとする民間企業が一体となって開発を進めてきた一大プロジェクトである。販売開始から約2年、更地だったこの土地は、一体どのような変化を遂げているのだろうか。期待に胸を膨らませながら、目の前にそびえ立つメインゲートへ向かった。

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ティラワ港に隣接している恵まれた立地条件

メインゲートに隣接するのは、2階建ての真新しい管理棟。ここに、ティラワ経済特別区の最大の特徴である「ワンストップサービスセンター」が入っている。同センターは、ミャンマー政府によって設置された、外国企業が入居時に必要とされる投資申請や会社登記、その他操業に関わる諸手続きの総合窓口だ。ミャンマーにおいては、外国企業が外国投資法に基づいて投資をする際、申請ごとに関係省庁で手続きを行う必要があり、時間を要するため企業にとっては少なからず負担となる。しかし、ティラワ経済特別区に進出する企業については、経済特区法が適用され、煩雑な手続きを全て一括で対応することが可能となる。その名の通り、ワンストップサービスが実現されているのだ。中へ入ると受付番号を配布するシステムが設置されており、窓口では複数の職員が丁寧に対応していた。同センターにはJICAの専門家が常駐し、ティラワ経済特別区へ進出するにあたってのアドバイスも行っている。外国企業が安心して支援を受けられる仕組みやノウハウが、集約されている。

管理棟に隣接するのが、当社が出資する物流事業会社、ティラワ・グローバル・ロジスティクス(以下、TGL(※2))だ。ティラワ経済特別区内に倉庫を構え、同じ施設に税関が常駐している点が、TGLの大きな特徴である。さらにティラワ港から車でわずか5分の距離、メインゲートを入った直後に拠点を構える、優位な立地も兼ねそなえる。TGLを利用すれば、入居企業はここで一気通貫した輸出入通関、物流サービスを受けられるのだ。

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ティラワではワンストップサービスセンターを擁し、窓口で丁寧に対応にあたる

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TGLには、ワンストップサービスセンターの一組織である税関が入居。 建物正面の左に税関のロゴが、右にTGLのロゴが並ぶ

さらに奥へ進むと、広くきれいに整備された区画に、いくつもの工場が立ち並ぶ。開業から約1年、ここに進出を決定している企業は約80社と、販売区画の約9割が成約済みだ。16年10月現在、20社近くの工場が稼働している。建設資材から食品・飲料、農業機械、肥料、縫製、組み立てなど業種は多岐に及ぶ。また、ティラワ経済特別区内には、レンタル工場も設置している。スペース貸しをするレンタル工場は、初期投資を抑えることができ、操業まで手間も時間もかからず、中小企業の進出を後押ししてくれる存在だ。その点が評価され、既存の工場はほぼ埋まり、隣地に新たなレンタル工場を建設しているところだ。

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初期投資が抑えられ、進出に伴うリスクを最小限に抑えることができるレンタル工場は人気が高い

これだけ多くの企業がティラワ経済特別区へ進出しているのには、基礎インフラの整備が進んでいることが背景にある。このティラワ経済特別区内には、光ファイバーを敷設しており、ヤンゴン市内よりも通信速度が速い。また、近くには従業員用の住宅も建設されており、通勤にも便利だ。以前はでこぼこだった周辺道路も、少しずつ整備が始められている。さらに、一年半前まで更地だったティラワ経済特別区隣接地には、日本の円借款で建設された、立派なガスタービン火力発電所がそびえ立つ。ティラワ経済特別区内の他、ヤンゴン市内にも電力を供給しているようだ。

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2016年から稼働しているティラワガスタービン火力発電所

2年前の光景から一変している様子を見れば、いかに事業が順調に進んでいるかが、すぐに理解できる。この急速な発展は、まさに両国政府の強力なサポートを受けたプロジェクトであることを裏付けている。
今は、ちょうど雨季が終わるころだ。これから乾季に入れば、さらに本格的な工事が始まっていく。また数年後には、今よりもっと多くの工場が建ち、雇用がさらに生まれ、インフラの改善も進んでいく。どこまでも発展し続けるティラワ経済特別区に、さらなる期待が膨らむ。

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ティラワ経済特別区を一望できる浄水プラントの屋上からの風景

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二年前まだ更地だった頃の建設現場

※1 日本、ミャンマー両国の政府および民間企業が出資する事業会社
※2 当社、上組、ミャンマー企業が出資している総合物流会社

携帯通信事業 新たなステージへの挑戦

14年に外資事業者の参入が開放されたことを機に、ミャンマーにおける携帯電話の普及は加速化している。当社は14年9月、同国の携帯電話の普及率がわずか10パーセントだった頃、KDDI、MPT(※3)と共同でミャンマーにおける通信事業(以下、MPT)を開始した。あれから約2年、テレノール、オーレドーと相次ぐ外資の通信事業者の参入もあり、今ではミャンマーにおける携帯普及率は90パーセント、近々には100パーセントに達する見通しだ。街中はもちろん、仏塔や寺院でもほとんどのミャンマー人がスマホを持ち歩いている。街中を歩いていて驚いたのが、携帯の広告の多さだ。露店のパラソルは黄色(MPT)、水色(テレノール)、赤色(オーレドー)の3色でほぼ埋め尽くされており、企業広告をラッピングしたバスやタクシーまで走っていた。近々4社目となる携帯事業者の参入も計画されており、各社しのぎを削る姿が見てとれる。現在MPTの市場シェアは約4割、97パーセントの人口カバー率は国内最大を誇る。携帯市場の競争が激しさを増す中、ナンバーワンオペレーターであるMPTの差別化戦略は、どこにあるのだろうか。

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ヤンゴン市内では通信事業者の広告が目立ち、携帯電話販売店が集まる通りもある

16年10月7日、ヤンゴン最大規模の商業施設であるミャンマープラザに、MPTは新たな店舗をオープンした。ミャンマープラザは、昨年オープンした近代的な商業施設で、平日にもかかわらず多くの若者や家族連れで賑わっている。MPTは現在約130もの店舗を展開しているが、このミャンマープラザ店は、特にMPTブランドの発信機能とカスタマーケアを重視している点が特徴的だ。MPTは16年9月より、同社初となる独自ブランドのスマホ販売を始めた。他のMPTや競合他社の店舗では、複数の外資メーカーのスマホが中心に置かれているが、同店では独自ブランドのスマホのみを置き、お客さまに対しMPTブランドを全面的に打ち出している。さらに、店舗の内装にもこだわりを見せる。同店では横の仕切りを設けた個別対面式のカウンターを設け、来店客が安心してゆっくりサービスの相談を受ける場を提供している。日本では当たり前の設備だが、ミャンマーではまだ個別対面式のカウンターはなく、競合店にいたっては会計用のカウンターしかない店舗が多く見られた。ミャンマープラザ店では、待ち時間にリラックスできるソファ席を設け、携帯の無料充電サービスや無料WiFiも提供する。「ショッピングに疲れたお客さまが気軽に立ち寄れるような場所にしたい」とMPTCOOの紅野吉章(当社モバイルソリューション事業第二部)は話す。まさに他社にはない手厚いカスタマーケアが、MPTブランドの価値を高めていくのだ。

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新店舗はMPTブランドの発信機能とカスタマーケアを重視したレイアウトで顧客満足度の向上を図る

ミャンマーでは、今、高速大容量の第4世代(4G)の普及が進んでおり、2017年には新たに1,800メガヘルツの周波数帯域も開放される見通しだ。今後はSNSなどでの写真投稿・閲覧から音楽・動画視聴のトレンドへ移り、各社はSIMカードの販売から、魅力あるサービスの提供を求められるステージへと変化してきている。MPTでも、4Gの本格展開に対応するべく、日々インフラの整備や新たなサービスの開発を進めているところだ。
MPTのオフィスをのぞくと、非常にたくさんの日本人とミャンマー人が一緒になって議論をしていた。本事業では、組織内の主要ポストには必ず日本側スタッフと相対する現地パートナー側のスタッフを置いている。日本側がもつ技術やサービスに関するノウハウ、そして現地パートナーのローカルの視点を上手く組み合わせて行っているところが、この事業の大きな強みでもある。
ミャンマープラザ店オープンの前日、深夜からオープン直前まで開店準備が行われていた。式典には現場スタッフが駆けつけ、オープン後は店舗の従業員に交ざり、紅野がお客さまと笑顔で接している姿を見た。激動期にありながら、この事業に関わる3社の一致した想いは、常に変わらず同じ方向を見ている。これが、MPTがさらなる飛躍を遂げていく原動力となるのだろう。

※3 Myanma Posts & Telecommunications(ミャンマー国営郵便・電気通信事業体)の略

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MPTでは、日本人、ミャンマー人幹部が一緒になって会議を行う

ミャンマー 今後の展望

ミャンマーで過ごした6日間を振り返ると、改めてこの国は自分が想像していた以上に、「開かれた国」であることを実感する。街中にはミャンマーの伝統的な化粧品である「タナカ」(頬につけるクリーム色のペースト)ではなく、日本人と変わらないお化粧をした女性や、ロンジー(民族衣装)ではなくワンピースやジーパンを着た現地人、外国人観光客や地元の若者が集まる、洋楽がかかったバーもたくさんあった。衣食住や文化がどんどん変化し続けているのだ。一方で、商業施設内では停電もあり、渋滞はひどく、物流網も整備されていないなど、インフラ面の課題は引き続きまだ残っていると感じた。ただ、このような社会的課題には、必ず新しいビジネスチャンスが潜んでおり、この新しいビジネスが、またミャンマーという国を発展させ、変えていく。現地の駐在員が「今我々が見る光景は、まさに今この瞬間しか見られない」と口を揃えて話す意味が、今回の訪問を通し非常に良く理解できた。私が見た光景は、近い将来どのような変化を遂げるのだろうか。1年後、2年後には想像もしていなかった世界が広がっているのかもしれない。この6日間で目にしたすべてのものを強く記憶に留めておこうと、心に刻んだ。

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近代化の中でも仏教への信仰を忘れないミャンマーでは、街中でも仏塔パコダがそびえたつ

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