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長崎発、世界を股に掛けるエアバッグ工場

2011年4月掲載

一段上の安全性能を実現するサイドカーテンエアバッグ

生活必需品や自己表現のツールとも言われるように、自動車は人々の暮らしを便利で豊かにする身近な存在として普及してきました。自動車の魅力や価値をより高め、暮らしに役立てるように、住友商事は自動車部品の原材料提供から開発、製造、そして完成車の販売まで、幅広く自動車事業に携わっています。

近年、重要視されてきた機能の一つが、安全性能の向上です。とりわけ新たな注目を集めているのが、前後列のドアと窓を覆い、衝突時の衝撃吸収と乗車している人の車外飛び出しを防ぐサイドカーテンエアバッグです。日本において、エアバッグは1990年代から急速に普及し始め、現在、事故発生時に運転席や助手席の前面から膨らむフロントエアバッグは、ほとんどの車種で標準装備になっています。安全性能をさらに一段高めるのがサイドカーテンエアバッグで、北米や欧州を中心に装着率が一気に向上すると予想されていたのです。

サイドカーテンエアバッグは、側面衝突による衝撃から頭部・首を保護する

世界中の車に搭載されるSAS製エアバッグ

2004年11月に、エアバッグの原材料開発からOPW技術の開発も手がけた旭化成せんいと、自動車内装材メーカーの住江織物をパートナーとして、長崎県松浦市に住商エアバッグ・システムズ(SAS)を設立。特別な織機で立体的に織り上げ、縫い目をなくすワンピースウーブン(OPW)という製袋手法を導入し、サイドカーテン用エアバッグ製造事業へ進出しました。九州・長崎で作られたエアバッグが、車を運転する世界中の人々の日々の安全を守っているのです。

「現在SASが製造したサイドカーテンエアバッグは、世界有数の安全システムサプライヤーを通じ、日本メーカーはもちろん、ゼネラルモーターズ、アウディーのほか、フォルクスワーゲン、BMW、ヒュンダイモーターなど、世界各国で生産される自動車に装着されています」と、SAS社長の安東武男は語ります。

日本が誇る高性能の織機。細かく複雑な動きで素早く緯糸を挿入していく

一気に採用が進むOPW製サイドカーテンエアバッグ

通常、サイドカーテンエアバッグは、サイドウインドウの窓枠上部に沿って格納されています。そして側面衝突を感知すると0.015~0.02秒でカーテン状に開き、衝突の衝撃から乗車している人の頭部を保護します。このようなサイドカーテンエアバッグは「ファーストインパクト仕様(F/I)」と呼ばれています。

サイドカーテンエアバッグにはもう一つ、「ロールオーバー(R/O)」という仕様があります。R/Oは衝突時だけでなく、数秒間膨らんだ状態を保ち、車体が横転しても乗車している人を保護し続け、車外へ放り出されることも防止します。この仕様に適している製造技術が、SASで導入しているOPWです。OPWは無縫製でエアバッグを作り上げるので、気密性に優れ、膨張保持時間が長い点が特徴です。

F/IとR/Oを合わせたサイドカーテンエアバッグの装着率は、北米、欧州、韓国ですでに80%を超えていると言われており、これが2015年には北米でほぼ100%、欧州と韓国で90%、日本や中国などのアジアでも40%を超えると考えられています。背景にあるのは、2009年3月に米国で発効した側面衝突事故への対応を求める法律です。この法律で側面衝突時の車外放出を抑える対応が段階的に始まっており、2016年9月には全車に義務付けられる予定です。現在この要求に対応できるのは、数秒間乗車している人を保護するR/O仕様のエアバッグだけ。中でも膨張時間の長いOPW製が、世界で急速に広がっていくと予想されています。

エアバッグの実証実験。膨らんだ後7秒間ほどは衝撃吸収能力を保持し続ける

先進のチャンバーレス技術を世界に先駆けて開発

現在、OPW製でエアバッグを製造できるメーカーは、世界で6社のみ。日本ではSAS1社です。OPWは高度で特殊な技術と高額な設備機器が必要になることから、新規参入は難しく、今後もこの6社で技術を高め、世界のニーズに対応していくことが求められています。

その第一弾として、SASは「チャンバーレス(Chamberless)」という先進技術を業界に先駆けて開発しました。
従来のOPW製エアバッグは、チャンバーと呼ばれる大型の膨張部分が数個できる構造です。一方チャンバーレスは、小さな膨張部分がバッグ全体に多数形成される仕様のため、バッグ内のガス拡散がスムーズで破裂する危険性も低く、より速く均一に膨張し、衝突時の衝撃を高レベルで吸収できます。いま主流の窓枠全体を覆う大型タイプではなく、自動車メーカーが求める「よりコンパクトで高機能なエアバッグ」が実現できる技術として、今後の普及に期待が寄せられます。

そしてもう一つ、SAS製エアバッグの高性能を支えているのが、シリコンコーティングによる機密性と難燃性の向上です。ビジネスパートナーである中興化成工業が提供するこの技術は、フッ素樹脂加工・コーティングで世界屈指の実力を誇ります。その技術を利用して製造された屋根用膜材は、北京オリンピックやワールドカップ南アフリカ大会が開催された競技場にも使用されています。

数十種に及ぶ糸。精密な機器を使って高品質のエアバッグを生産するため、徹底した品質管理に努めている

安全・安心の未来のために

R/Oの採用が進むことにより、今後OPW製エアバッグは、大きな伸びが見込まれます。数年先の受注も確定しつつあり、SASでは2013年度の売上高を60億円(2009年度比約180%)、販売枚数597万枚(同比約350%)と予測しています。「この生産規模に対応するため、SASでは住商グループのスケールメリットを最大限に生かし、新たな設備投資や新工場の建設を検討しています。OPW製エアバッグの世界シェアも現在の5%から、2017年度を目途に10%まで伸ばすことを目指しています。」と、常務取締役製造本部長の髙橋孝寛。チャンバーレスの技術向上を進めるとともに、原糸を含む新たな技術開発と生産効率の向上に努めます。

SASでは安全性の高い優れた製品を低価格で提供することで、サイドカーテンエアバッグの装着率増加に貢献し、安心して運転できる車社会の創造に取り組んでいきます。

全商品に対し全数検査を行うSAS社員

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